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2017年3月21日 (火)

94 月と太陽のロンド (その10)

どれくらい時間が経ったのだろうか。

まだ、もうもうと土埃が上がる中、ようやく顔を上げたルパンたちは言葉を失った。洞窟の壁は見事なまでに全て崩れ落ち、眼前に180度の壮大なパノラマビューが広がっている。

明るい太陽の光を受けて生き生きと輝く濃淡の緑と、その中に目に鮮やかな赤や黄色と色とりどりに咲き乱れる熱帯の花々。天空との境界線もあやふやに、どこまでも果てしなく広がる青く澄んだ海の縁を、キラキラと白い砂浜がダイヤの粒のように美しく取り囲む。きれいな弧を描いて宙を舞う、つがいの鳥の広げた翼の先に、透き通るような白夜月がぽっかり浮かんでいた。

頬を優しくなでる心地良い風に、誰ともなく自然と溜息が漏れる。

アデラ王女が歌うように口ずさむ。

 

 

月の王女は、太陽の王子に恋をして、

夜空の星々を身に纏い、王子の心を射止めんとす。

その王女の美しさの虜となった王子は、

持てる限りの光をかき集め、その愛に応えおろう。

ふたりが交わるその瞬間、

神が作りたもうたと見まがうほどに、

月と太陽、

世界で最も美しい宝が目の前へと供されるであろう。

 

 

「じゃあ、スキダマリング帝国の秘宝というのは…」、次元が帽子のツバを上げて目を見張る。

「どうやら、この景色、だったみたいね」、清々しい顔でルパンが笑う。

「…美しい」、五右エ門が嘆息する。

「…そうね」、不二子も穏やかな顔で空を見つめる。

その壮麗なる眺めを前に、ホゼア大将が崩れるように膝を付き、わっと泣き崩れた。

「こんな、こんな美しい島だったなんて…、それなのに私は…」

「…分かればいいのです。この島はこれからも、この先も、ずっと美しいままで。そして、それを守っていくのが私たちの役目なのです」

アデラ王女がホゼアの肩にそっと手を置いた。

「ホゼア、これからもエイブと共に私を助けてくれますね?」

「姉さん…、いえ王女。もちろんです」

 

「あ~あ、いっくらすげえお宝でも、こればっかしは持って帰れないやねえ」

そう言いながらも、どこか満足気なルパン。

と、五右エ門がふいに辺りを見回して怪訝そうな顔をする。

「うむ? なんだ、この音は?」

と、天井からピシ、ピシッ、と不穏な音が微かに聞こえるや、カラカラと小石がこぼれだした。

「やばい! 天井が崩れる! 逃げるぞ、急げ!!」、ルパンが叫ぶ。

「退路は任されよ!」、五右エ門が岩壁をすっぱり斬り抜きショートカットする。

「ああん、ネックレスと王冠が~~」、不二子が名残惜しそうに神殿の方へと振り向く。

「ばかたれ! お前が伝説になる気かっ!!」、次元が不二子の手を引く。

全員が神殿を後にしたその瞬間、岩壁はガラガラと見事に崩れ落ち、神殿の入り口は跡形もなく消え去った。

残ったのは、これからも永遠に秘密を守り続ける鍾乳洞の静けさばかり。

「…これでスキダマリング帝国は本当に伝説となったわけだな」

ルパンがふっと優しく呟いた。

 

***

 

「みなさん、本当にありがとうございました。これからは王女と共に、この島の美しい自然を全直で守っていきたいと思います」

ルパンたちが着岸した砂浜まで見送りにきたホゼア大将の顔つきは、最初に比べると随分と自信に満ちて頼もしい。

「ああ、頼むよ。今度俺たちが来た時に、島が観光客でわんさと溢れかえって、でっかいリゾートホテルが立ち並んでなければ良いがね」

「ルパンさん、すみません。もうそれは言わないでください…」

皆であっはははと笑って小型機に乗り込む。

美しい小島の上空を旋回すると、白砂に縁取られた島は三日月のような形をしており、そこに明るい太陽の光が愛おしむようにキラキラと反射していた。

王宮のテラスに、アデラ王女と執事のホゼアが並んで手を振るのが小さく見えた。

 

アデラ王女はこれまでの非礼を詫び、島を最後とする夜には初めてルパンたちを客人として丁重にもてなし、晩餐の席にも同席した。

「王女は最初から秘宝が何か分かっていたのかい?」

ルパンの問いに、王女は晴れやかな笑顔で答えた。

「もし世間で言われているような莫大な財宝が眠っていたとしても、私は掘り起こす気はありませんでした。なぜなら、それよりも素晴らしい宝があることを知っていたからです」

「…君ならきっと大丈夫、この島を守れるだろうさ。でも、それには愛する人の力が必要だ。スキダマリング帝国は王族の存在こそあれ、身分によるタブーのないおおらかな国だったと聞いているぜ。王女様も今さら身分に悩む必要はないんでないの?」

冗談めかしく、うききと笑って見せるルパン。

そっと頬を染めて俯く王女の後ろで、執事のホゼアが深々と頭を下げた。

 

***

 

「あ~あ、結局今回も獲物はゼロ、か」、助手席の次元が咥え煙草で大きく伸びをする。

「まあ良いではござらぬか。ホゼアも心を入れ替えたことだし、きっと王女も幸せになるであろう」、五右エ門が遠く小さくなっていく島を見送りながらしみじみと呟く。

「今度はハネムーンで、ふたりっきりで来ようね~、ふうじこちゃ~ん」、ルパンが操縦桿を握りながら大きく後部座席に振り向き、不二子に意味深な目配せする。

「ちょっとルパン! 危ないじゃない、ちゃんと前向いて運転してっ! それに何言ってるか意味分かんないんですけど?」、不二子が腕組みしてツンと横を向く。

その腕組みをしてさらに盛り上がった胸の谷間に、何やらキラリと光るものが。

「おっ!? 不二子、なんだそれ!? ちょっと見せてみな」、次元が目ざとく見つけて手を伸ばす。

「なっ、なによ。なんなの。これ、私のよ!?」、その手を不二子がしっしと払う。

「え~不二子ちゃん、抜け駆けはないんじゃないのお?」

「だからっ! ルパンはちゃんと前見て運転してって!」

その騒動を黙って見ていた五右エ門が、やにわに斬鉄剣の鞘を器用に操るや、不二子の首に掛かっていたネックレスを奪い取った。

「きゃ、五右エ門! 何するのよ!?

「…赤サンゴであるな」

「どらどら? わお、本サンゴじゃん。50㎝はあるんじゃね?」

「どういうことかな、不二子さんよ」

ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべて迫ってくるルパン、そして次元に、むうと膨れた不二子が観念したように叫ぶ。

「ホゼアが騙したお詫びにくれたのよ。このまま一緒になってくれたら赤サンゴなんて山ほどあるって言うのを断ってネックレスだけで我慢したんだから、もういいでしょ? 返してよっ!」

「あんの大将、俺様に断りもなく不二子を口説きやがって~~」

「…腹たてるとこ、そこか!?

わいわい揉める4人を乗せた小型機は、フラフラと蛇行しながら太平洋を飛んでいく。

次こそは必ずや、目もくらむようなすごいお宝を手に入れることを夢見ながら。

「きゃあルパン、だから前、前見てって~~!!

 

(完)

 

 

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ジゲフジ小説 76~100」カテゴリの記事

コメント

有岡さん、こんにちは。
新ル風コメディ「月と太陽のロンド」、読ませていただきました。
こんなに素敵な長編を書けるなんてやっぱり有岡さんはすごいです。
私はこのお話、大好きです。コメディー最高!!
展開も素晴らしく新ルにありそうなところもいいですね!

初っぱなから不二子ちゃんのかっこよさにウットリしていたら、突然のルパンの登場にビックリで、ふたりの楽しげなやり取りには笑わせてもらいました(笑)。
そして、アジトと南の小国での次元さんと不二子ちゃんの喧嘩っぷりも見所でしたが、バザールの老人が不二子ちゃんに話してくれた“恋岬”の言い伝えもスキダマリング帝国の秘宝伝説と同様にすっごくロマンチックで素敵ですね。
こういう有岡さんの乙女チックな発想力は可愛らしくていいなぁと思っています。

夜に外出した不二子ちゃんを心配するルパンと“月の王女”を持ち逃げされるのではないかと部屋を飛び出す次元さんと五右エ門はルパンとは相反する心境のように見えて、悪態をついていても内心はふたりとも不二子ちゃんの身が心配なんですよね、きっと。
しかも、海を目の前にルパンが語る夢物語を聞く不二子ちゃんの心境がなんとも切ない・・・。
そして、ケガをネタにして次元さんをからかうルパンと次元さんの会話や次元さんと不二子ちゃんの言い合う傍らで睨みあうルパンとアデラという動と静の対比した描写が場面に緊迫感をあたえていてとても良かったです。
ルパンが言った「もうジゲフジ黙らっしゃい!」や次元さんが言った「ばかたれ!お前が伝説になる気かっ!!」は結構ツボにはまったセリフです(笑)
大岩を小石に切り刻んじゃう五右エ門の描写は躍動感があってかっこよかったです。(今回は五右エ門がよく活躍してますね♪)

洞窟内での次元さんに抱きつく不二子ちゃんは可愛くていいし、場の空気を一変させてしまう機転の利かし方も不二子ちゃんらしくてとっても素敵です。
王冠を見つけてからのスリリングでスピード感がある展開は、お話がいっそうおもしろくなってきてよかったと思います。
特にルパン達が反撃するシーンはめっちゃかっこ良かったです。
不二子ちゃんとホゼアは組んでるのは予想していたのですが、ホゼアとライアー卿がつるんでいたのは意外でした。
そして、スキダマリング帝国の秘宝が島の美しい自然だったというのは素敵ですね。
ラストの不二子ちゃんがホゼアにもらった赤サンゴのネックレスをめぐる和気あいあいとした4人のやり取りが楽しくてすごくよかったです。
今回も楽しくて素敵なお話をありがとうございます。
また次回作も楽しみにしています。
いつも本当に長々とすみません。
ありがとうございました。

綾子さま
こんばんは。いつも丁寧なコメントありがとうございます。感謝。
一応ボツ作ではあったのですが(理由は後記に書きます)、楽しんでいただけてめっちゃ嬉しいです。何度も読み返してはによによしてます。しかも、自分で書いた作文のくせに、綾子さまのコメントで改めて状況を理解したり(汗)(静と動の対比、気付かなかった…)。そして、乙女チックな発想! このお褒めの言葉にちょっと舞い上がってしまいました。そうか、わたしにも乙女な部分があったのか(笑)。これからも微々たる乙女な部分と、毎日がコメディの関西人の心意気? で精進していきたいと思います。本当にありがとうございました!!

こんにちは、ナオです。今回のお話しとても楽しかったです。まさに新ルのアニメという感じで、コメディタッチの中にもちゃんと4人の見せ場があって良かったです。何気にいつも不二子の近くにいる次元という、もしかして次元てば不二子ちゃんのこと好きなんじゃないの!?的なジゲフジ度合も新ルぽいです。コメディになると断然4人のキャラが際立ちますよね。最後のオチまで楽しませてもらいました。次回作もよろしくお願いします、ありがとうござました。

ナオさま
こちらこそ、いつもありがとうございます。楽しんでいただけて何よりです。
基本、私の中のルパン三世はセカンドルパンなので、作文もたいていがコメディです。そしてナオさまの仰る通り、時々テレビで見せる「実はこのふたり付き合ってんじゃないの~!?」的な妄想をかきたてる距離感が、コメディでのジゲフジのベースとなっております。はい。
また随時更新していきますので、どうぞよろしくお願いします!

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